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セブンイレブンに学ぶ、勝ち続けるスタートアップの作り方〜④鈴木会長の金言まとめ〜

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Photo by bloomberg

他店を見学するな。

この言葉の真意は、”下手に他店を見学して表面上の差別化を図ったところで、大同小異に陥る”という警告。

スタートアップが常勝セブンイレブンから学ぶべきは、表面的な戦略ではなく、もっと普遍的な、再現性の高い商売の基本コンセプト/考え方。そんなエッセンスがつまった鈴木会長の発言をまとめてみる。ある意味、備忘録。

1.消費者視点

気がつくとサプライサイドは自らの都合をユーザーに押し付けていることが多々あります。様々な制約条件によって我々の常識が、いざユーザー視点に立った時にまったくもって非常識なことがあることを、常に意識しなければなりません。

”売り手の合理は買い手の不合理。お客様のわがままに対して、われわれはどこまで歩調を合わせることができるかどうか。売り手側はほとんどの場合、自分たちの都合を優先してしまう。”

”社員も一歩会社から離れれば生活者であり、買い手です。買い手としては自分たちの消費パターンが全く変わり、ニーズが劇的に変化していることを誰もが実感している。ところが、仕事になると一点、売り手側の都合にすり替わり過去の延長で考えてしまう。”

”人は良く売れた商品をまた揃えようとする。それは”昨日の顧客”に対する商売の仕方で、大切なのは”明日の顧客”は何を求めているかを考え抜くこと”

”これはチャーハンとは言えない。売れてるからいいのか!?自分たちが納得いかない商品が売れ続けていることに危機感を持つべきではないのか?”

2.絶対価値

競合を意識しすぎると同質化を生む。結局差別化するつもりが、同じ土俵で相撲を取っていては本当に向き合うべきユーザー価値を見失う。厳しい競合環境を勝ち抜くために必要なのは、とくかく絶対的なユーザー体験の向上に努めること。すなわち、相対価値ではなく絶対価値の追求。

”競争の時代における本当の差別化は、妥協の無い絶対の追求によってしか生まれない。”

”われわれの競争相手は同業他社ではなく、最大の競争相手は目まぐるしく変化する顧客ニーズである”

”質の追求を、その構成要素の一つひとつについて子細にやっていけば、競合の中で売り上げが急激に下がるということはない。逆に、まわりに競合店ができたために、よけいに自店の質の高いことが照明されて、むしろ業績が上がる場合もある。”

”競合ができて売り上げが下がるのは、競合のせいではなく、お客様から見て、その店の価値比較をできる物差しができた結果にすぎない。”

”ハウツー本は読むべきではない。そんなのものは過去のことをまとめているだけであり、新しい時代に向かって何の役にも立たない。そういうのを読むからとらわれるんだ。”

3.基本の徹底

家も、スポーツも、すべては土台(基礎)のがしっかりしてはじめて成り立つもの。一見遠回りに見える基本の徹底というアプローチは、短期的に結果が出るものではない分、時間をかけてしっかり築けば少しの環境変化や競合の登場にもビクともしない圧倒的な競合優位性に。

”経営は変化への対応がすべて。だからこそ、これを支えるベース(土台)としての基本が不可欠。基礎体力や基本のできていないところに、応用技はありえない。”

”先に一歩踏み出したところほど、より早くマンネリにおちいる危険性が高い。マンネリへの誘惑を排し、基本を徹底して守り続けることで、結果が後からついてくる。”

”むずかしいのは基本を確実に実行すること。会社が大きくなればなるほど、経験を積めば積むほど、仕事に慣れれば慣れるほど基本がおろそかになる。基本の徹底以外に、仕事を成功させる方法はない。”

〈関連記事〉
セブンイレブンに学ぶ、勝ち続けるスタートアップの作り方〜③商売の基本原則〜
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セブンイレブンに学ぶ、勝ち続けるスタートアップの作り方 〜①単品管理とリーンスタートアップ〜

セブンイレブンに学ぶ、勝ち続けるスタートアップの作り方〜③商売の基本原則〜

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「商売/経営の変わらない原理原則にこそ、いつでも徹底し、必ず立ち戻るべき本質である。」

古くは経営の神様と言われた松下幸之助さん、最近ではユニクロの柳井正さんでしょうか。
どちらも”基本原則”を現場の末端まで徹底して成功をおさめた経営者という印象を受けますね。

最近研究の対象にしているセブンイレブン、鈴木会長もこういった商売における原理原則を「基本四原則」として何十年も前から徹底しています。
小売り業界で勝ち続けるセブンイレブンが貫いている商売の原理原則はスタートアップ、特にtoCののWEBサービスにも適用できる原理原則なのではないか。それが今回のエントリーの大きな仮説です。

早速、セブンイレブンの「基本四原則」を紹介します。

商売の基本四原則

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1.鮮度管理
2.品揃え
3.クリンリネス(清潔さ)
4.フレンドリーサービス

どれも特段詳しく解説するような難しい項目ではないのは一目瞭然ですね。まさに当たり前すぎる商売の基本原則。ただ、だからこそ徹底するのが難しい。

「先ずは基本に戻り、それを徹底させること。そこから積み上げていくしかない。(鈴木敏文)」

実際この話を受けて複数のコンビニ間で比較してみると、不思議とその違いが見えてきます。店舗によってもちろん差異はありますが、日々これを意識してコンビニを利用していると、やはり一番徹底できていると感じるのはセブンイレブンです。そして、このボディーブローのような蓄積が、顧客へのロイヤリティへとつながっているというのが実感できるようになってきます。

ではそれはどういったメカニズムなのか、WEBサービスにはどのように活かせるのか。それぞれを得られる「ユーザー体験」にフォーカスしてもう少し掘り下げて見ていきましょう。

1.鮮度管理

ユーザー体験:驚きと満足

常に”鮮度”の高い商品を揃えること。旬なもの、鮮度が高いものはその商品本来のポテンシャルをグッと引き上げますね。焼きたてのパン、炊きたてのご飯、揚げたてのパン。どれもがより高い顧客価値を持つことは自明でしょう。ニュースサイトであればより最新のネタ、旬な情報を。ソーシャルメディアでれば友達の最新の情報を。価格比較サイトならば最新の最安値価格を。いかに驚きと満足を与えられ続けるか、コンテンツの質のあくなき追求が鮮度管理です。

2.品揃え

ユーザー体験:がっかりさせない、飽きさせない。

ユーザーが欲しいものを、欲しいと思った時にすぐに届ける。潜在的に欲しいと思うようなものを提示する。折角来店した顧客をがっかりさせずに、期待に応えること。それが品揃えです。最初のエントリー単品管理がまさに利いてくるところですね。WEBサービスであれば、わざわざ訪れてくれたユーザーをがっかりさせないこと。ニュースサイトであればユーザーが求めるカバレッジの高いソースを提示できるか。ソーシャルメディアであればどれだけ友達が使っているか。そして、鮮度の高いコンテンツを最適なタイミングで最適なユーザーに届けるというサービスのアーキテクチャの部分もキモになってきます。

この「鮮度管理」「品揃え」はWEBサービスにおいては”コンテンツ”に関わる基本原則とも言えますね。

「お客様が気がついていないニーズを一緒になって見つけてあげて、それを買って頂き、しかも喜んで頂く。これが次の売り上げにつながっていきます。(鈴木敏文)」

3.クリンリネス

ユーザー体験:不快な思いをさせない

整理整頓され、清潔な店内は気持ちよいですよね。いや、むしろそれば当たり前のように見えるので気づかないことも多いでしょう。逆にちょっとでも汚い店内はものすごく印象に残ると思います。何も不快な思いをさせないで使って頂くこと。これがクリンリネスの大事なポイント。当たり前すぎて気づかない、そうWEBサービスであればサービスがダウンしないこと。UIがシンプルで分かりやすく、迷わないこと。表示速度が早く、サクサク使えること。この店長さんの記事が面白いのですが、こういう地味な努力が実はユーザー体験を向上させているのですね。

4.フレンドリーサービス

ユーザー体験:また来よう、と思わせる

入店するといらっしゃいませと元気な挨拶があること。いつも笑顔が素敵な店員さんがいること。良く行く店では「いつもありがとうございます」と言ってもらえること。こういう「あ、また来よう」と思わせるのがフレンドリーサービスです。WEBサービスであれば会員登録した誕生日にメールが届く、たくさん訪問すると特典がついたりグレードがアップする、はたまた気の利いたユーザーサポートでも良いかもしれません。WEBの世界でも最終的には人と人。そこに「おもてなしの心」が見え隠れする時に、人はまた来ようと思ってくれるんですね。

この「クリンリネス」「フレンドリーサービス」はWEBサービスにおいては使用感や利用体験という”UX”に関わる基本原則ですね。

「お客様にとっての得は、必ず私たちにとっての得にもつながってきます。商売の上手な人と下手な人の差は、ここにある。(鈴木敏文)」

基本四原則の追求こそ絶対価値の追求

基本は簡単だが、徹底するのが難しい。それは組織が大きくなればなるほど、その末端への徹底はより難しくなるでしょう。仕事に慣れれば慣れるほど、経験を積めば積むほど基本が疎かになるもの。だからこそ、少数のスタートアップは基本原則を忠実に遂行していくのに適しているのではないでしょうか。基本四原則を徹底し、サービスの絶対価値をとにかく高めてゆくことに全神経を注ぎ込む。前回のエントリーでポイントだった絶対価値の追求ですね。その基本の徹底、絶対価値の追求による結果、激しい競争環境の中において何が起こるのか。鈴木会長の話は、スッと腹に落ちてきます。

「私たちの店で質を構成しているのは基本四原則です。質の追求を、その構成要素一つひとつについて子細にやっていけば、競合の中で売り上げが急激に下がることは無いはずです。逆に、まわりに競合店ができたために、よけいに自店の質の高いことが照明されて、むしろ業績が上がる場合があるのです。」

GrowthHackで言えば、ディフェンスの部分ですね。バケツの穴を塞ぐこと、そのために必要なのが、鮮度管理であり品揃えでありクリンリネスであり、フレンドリーサービスです。

「スポーツの基礎体力と同じように、日常的につちかった売る力がなければ、なにをやっても効果は期待できません。キャンペーンで景品をつけることで売ろうというやり方は邪道です。せっかく宣伝費を投じてもマイナスになりかねない。そうならないためにも、基礎体力を高めること。つまり、基本四原則を徹底することです。」

いつでも大切なのは基本。立ち戻るべきは原理原則。既にWEBサービスを展開している皆さんも、四つの基本原則にそって自社サービスの棚卸しをしてみてはいかがでしょうか。

〈過去記事〉
セブンイレブンに学ぶ、勝ち続けるスタートアップの作り方〜②業界初、を目指さない〜
セブンイレブンに学ぶ、勝ち続けるスタートアップの作り方 〜①単品管理とリーンスタートアップ〜

セブンイレブンに学ぶ、勝ち続けるスタートアップの作り方〜②業界初、を目指さない〜

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進撃のセブンイレブン。

勝ち続けるセブンイレブンは1杯のコーヒーでも競合他社より圧倒的な実績を誇っていますね。

セブン-イレブンの「セブンカフェ」、3億杯を突破–1日1店舗当たり約95杯

今月末には4.5億杯の累計販売見込み。1杯あたりの利益を50円とするとざっくり1年で225億円の利益です。しかも約2割がサンドイッチや菓子パンなど併せ買いというからその業績インパクトは計り知れません。

さて、今回も常勝セブンイレブンの勝ち続けるためのパターンや思想・哲学から、我々スタートアップに活かせる普遍的な勝つための本質を分析します。
前回は「仮説と検証」というリーンスタートアップマインドの本質を考察しましたが、今回は先ほどの「セブンカフェ」を導入に話を進めましょう。

今やどこのコンビニも導入しているこの「いれたてコーヒー」、実はセブンイレブンは最後発です。ドトールやスタバなど、いわゆるカフェ以外でのコーヒー販売で最初に実績を作ったのはコンビニ業界よりも08年に100円コーヒーを刷新して躍進したマクドナルドですね。そこから現在に至まで、まぁとにかくコーヒーをとりまくビジネス環境は面白く、進化し続けています。

“いれたてコーヒー大戦争”の勝者は? コンビニVSカフェVS異業種

さて、08年のマックコーヒーから始まった外食産業/コンビニ業界を巻き込んだコーヒー戦争においてセブンイレブンは2013年の1月にようやく業界最後発としてスタートさせました。しかし、実はセブンイレブンの「コーヒー販売」への取り組みは今をさかのぼること30年も前に始まっています。

登場わずか1年で日本のコーヒー消費量1%を占めた、「セブンカフェ」の凄さ

このあたりは上記記事にもの凄く詳しく書いてあるので譲ります(参考になります)が、セブンイレブンはセブンカフェの開発に約2年、そして最初のコーヒーの提供に関しては30年前。着手に関しては最も早く、リリースは最後発。そして今では最もコーヒーを販売する小売りに育っています。

ではセブンカフェの勝因は何なのでしょうか?

標高1000m以上の厳選したアラビカ豆?
富士電機と共同開発した最強ドリップマシン?
さ、佐藤可士和?

こんな分析記事も面白いですね。

コーヒー飲み比べテスト: セブンイレブンのコーヒーが圧勝したのは、単品販売のスケールメリットです

確かに色々な要因(HOW)はありますが、本質的に大事で、我々が学ぶべきはセブンイレブンのものづくり哲学(WHY)です。

相対価値よりも絶対価値

鈴木会長の有名な教えに「他店を見学してはならない」というのがあるそうです。競争環境における戦略とは差別化そのものです。ということは競合他社が提供しているものを研究し、それといかに差別化するかというアプローチが定石ですが、セブンイレブンは違うのです。ここでも軸となるのが「お客様視点」。その結果、差別化せずに差別化するという次元に到達していると考えます。先ず差別化ありきではなく、徹底したユーザー目線で考えた時に、一見するとビジネス上不合理極まりないモノの中に、独自の合理的な特殊解が見つかった時が最強の「戦略」、とも言えますね。

例えばチャーハンの開発を例としましょう。

(競合を研究した上での相対価値アプローチ)
競合のチャーハンはこうだから、うちのチャーハンはもっとこういう違いを出そう。

(セブンイレブンのお客様視点の絶対価値プローチ)
お客様が今まで食べてきたチャーハンの中で一番美味しいチャーハンを作ろう。

絶対価値の追求は、すなわち徹底的なユーザー目線。ターゲットユーザー、もしくは自分がユーザーとしてそのサービスを体験した時にどこにも負けない、恥ずかしくない圧倒的な価値があるかどうかが唯一の判断基準。顧客の相対的な満足感ではなく、絶対的な満足感。それが結果として競合他社との差別化になります。つまり、差別化をせずに差別化するということです。

よって、絶対価値の追求において業界初なんてことはどうでも良いわけですね。ユーザー視点でもっとも良いものを作れば、結果はあとから付いてくる。もちろん言うは易し、絶対価値の追求においては業界の慣習、既成概念とのかなりハードルの高い戦いがあります。そういうものを乗り越えるから、イノベーションが生まれる。競合ばかり気にしていたら、結局同じフィールドでの陣取り合戦にしかならないわけです。

ちなみにセブンイレブンのチャーハンの事例は示唆に富みます。98年人気商品だったチャーハンを鈴木会長は店頭から下げました。「売れてるからといって、この程度の商品しか扱っていないかと思われたら信用は失われてしまう」と。そこから本格中華料理屋のチャーハンを徹底的に研究し、違いを定量的に検証し、鍋の温度の違いをつきとめ、専用の鍋を開発して最高の味を実現。1年8ヶ月かけて開発した「本格チャーハン」はさらに大人気商品となっているそうです。ここでも出てくる「仮説と検証」のプロセス。ありとあらゆるアートな仮説と定量的なサイエンスの検証。その根幹にあるのが、絶対価値の追求というわけですね。

直近のスタートアップ界隈ではフリマアプリ、ニュースアプリなどが目に見えて激しい競争環境にあると言えますね。今回の事例で学ぶべきは、同業他社を見るよりも自分たちが解決したい課題に対するソリューションの最大化です。Googleは「Great just isn’t good enough.」と言います。そして鈴木会長は「我々の競争相手は同業他社ではなく、めまぐるしく変化する顧客ニーズである。」と言い切ります。見るべき相手、知るべき課題は、その目の前のユーザーひとりひとりです。今ある結果は昨日までの価値、大事なのは明日のユーザーのための新しい価値。キーワードは、「絶対価値」です。

〈過去記事〉
セブンイレブンに学ぶ、勝ち続けるスタートアップの作り方 〜①単品管理とリーンスタートアップ〜