セブンイレブンに学ぶ、勝ち続けるスタートアップの作り方〜②業界初、を目指さない〜
進撃のセブンイレブン。
勝ち続けるセブンイレブンは1杯のコーヒーでも競合他社より圧倒的な実績を誇っていますね。
セブン-イレブンの「セブンカフェ」、3億杯を突破–1日1店舗当たり約95杯
今月末には4.5億杯の累計販売見込み。1杯あたりの利益を50円とするとざっくり1年で225億円の利益です。しかも約2割がサンドイッチや菓子パンなど併せ買いというからその業績インパクトは計り知れません。
さて、今回も常勝セブンイレブンの勝ち続けるためのパターンや思想・哲学から、我々スタートアップに活かせる普遍的な勝つための本質を分析します。
前回は「仮説と検証」というリーンスタートアップマインドの本質を考察しましたが、今回は先ほどの「セブンカフェ」を導入に話を進めましょう。
今やどこのコンビニも導入しているこの「いれたてコーヒー」、実はセブンイレブンは最後発です。ドトールやスタバなど、いわゆるカフェ以外でのコーヒー販売で最初に実績を作ったのはコンビニ業界よりも08年に100円コーヒーを刷新して躍進したマクドナルドですね。そこから現在に至まで、まぁとにかくコーヒーをとりまくビジネス環境は面白く、進化し続けています。
“いれたてコーヒー大戦争”の勝者は? コンビニVSカフェVS異業種
さて、08年のマックコーヒーから始まった外食産業/コンビニ業界を巻き込んだコーヒー戦争においてセブンイレブンは2013年の1月にようやく業界最後発としてスタートさせました。しかし、実はセブンイレブンの「コーヒー販売」への取り組みは今をさかのぼること30年も前に始まっています。
登場わずか1年で日本のコーヒー消費量1%を占めた、「セブンカフェ」の凄さ
このあたりは上記記事にもの凄く詳しく書いてあるので譲ります(参考になります)が、セブンイレブンはセブンカフェの開発に約2年、そして最初のコーヒーの提供に関しては30年前。着手に関しては最も早く、リリースは最後発。そして今では最もコーヒーを販売する小売りに育っています。
ではセブンカフェの勝因は何なのでしょうか?
標高1000m以上の厳選したアラビカ豆?
富士電機と共同開発した最強ドリップマシン?
さ、佐藤可士和?
こんな分析記事も面白いですね。
コーヒー飲み比べテスト: セブンイレブンのコーヒーが圧勝したのは、単品販売のスケールメリットです
確かに色々な要因(HOW)はありますが、本質的に大事で、我々が学ぶべきはセブンイレブンのものづくり哲学(WHY)です。
相対価値よりも絶対価値
鈴木会長の有名な教えに「他店を見学してはならない」というのがあるそうです。競争環境における戦略とは差別化そのものです。ということは競合他社が提供しているものを研究し、それといかに差別化するかというアプローチが定石ですが、セブンイレブンは違うのです。ここでも軸となるのが「お客様視点」。その結果、差別化せずに差別化するという次元に到達していると考えます。先ず差別化ありきではなく、徹底したユーザー目線で考えた時に、一見するとビジネス上不合理極まりないモノの中に、独自の合理的な特殊解が見つかった時が最強の「戦略」、とも言えますね。
例えばチャーハンの開発を例としましょう。
(競合を研究した上での相対価値アプローチ)
競合のチャーハンはこうだから、うちのチャーハンはもっとこういう違いを出そう。
(セブンイレブンのお客様視点の絶対価値プローチ)
お客様が今まで食べてきたチャーハンの中で一番美味しいチャーハンを作ろう。
絶対価値の追求は、すなわち徹底的なユーザー目線。ターゲットユーザー、もしくは自分がユーザーとしてそのサービスを体験した時にどこにも負けない、恥ずかしくない圧倒的な価値があるかどうかが唯一の判断基準。顧客の相対的な満足感ではなく、絶対的な満足感。それが結果として競合他社との差別化になります。つまり、差別化をせずに差別化するということです。
よって、絶対価値の追求において業界初なんてことはどうでも良いわけですね。ユーザー視点でもっとも良いものを作れば、結果はあとから付いてくる。もちろん言うは易し、絶対価値の追求においては業界の慣習、既成概念とのかなりハードルの高い戦いがあります。そういうものを乗り越えるから、イノベーションが生まれる。競合ばかり気にしていたら、結局同じフィールドでの陣取り合戦にしかならないわけです。
ちなみにセブンイレブンのチャーハンの事例は示唆に富みます。98年人気商品だったチャーハンを鈴木会長は店頭から下げました。「売れてるからといって、この程度の商品しか扱っていないかと思われたら信用は失われてしまう」と。そこから本格中華料理屋のチャーハンを徹底的に研究し、違いを定量的に検証し、鍋の温度の違いをつきとめ、専用の鍋を開発して最高の味を実現。1年8ヶ月かけて開発した「本格チャーハン」はさらに大人気商品となっているそうです。ここでも出てくる「仮説と検証」のプロセス。ありとあらゆるアートな仮説と定量的なサイエンスの検証。その根幹にあるのが、絶対価値の追求というわけですね。
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直近のスタートアップ界隈ではフリマアプリ、ニュースアプリなどが目に見えて激しい競争環境にあると言えますね。今回の事例で学ぶべきは、同業他社を見るよりも自分たちが解決したい課題に対するソリューションの最大化です。Googleは「Great just isn’t good enough.」と言います。そして鈴木会長は「我々の競争相手は同業他社ではなく、めまぐるしく変化する顧客ニーズである。」と言い切ります。見るべき相手、知るべき課題は、その目の前のユーザーひとりひとりです。今ある結果は昨日までの価値、大事なのは明日のユーザーのための新しい価値。キーワードは、「絶対価値」です。
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