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2014-01-27

セブンイレブンに学ぶ、勝ち続けるスタートアップの作り方 〜①単品管理とリーンスタートアップ〜

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コンビニの売り上げ、初の現象に

統計を公表するようになって初めて、コンビニ全体で売り上げが昨年比でマイナスになったそうです。長引くデフレの中にあっても苦しむスーパーや百貨店とは対照的にコンビニ各社はしっかりと成長を続けてきたわけですが、ここに来ていよいよその伸びが鈍化せざるを得ない本当に難しい局面を迎えているということでしょうか。

しかし、そんな中で唯一、昨対比でプラスを維持しているのがセブンイレブンです。様々なニュースや書籍でセブンイレブンの強さに関しては語られてきていますが、セブンイレブンの強さを何よりも示すのが下記の店舗平均の日販売り上げですね。上位三社の数字を比較してみると

1位 セブンイレブン:68万2000円
2位 ローソン:55万8000円
3位 ファミマ:53万7000円

(※成長鈍化のコンビニ 上位と下位の差拡大 淘汰再編の可能性も|msn産経ニュース

2位のローソンとは実に13万円もの差が開いています。月間の差ではなく、あくまでデイリーの売り上げでこれだけ差が離れているのですから圧倒的な強さが伺えますね。最近では「金の食パン」などのプライベートブランド(PB)や店舗によっては毎朝行列ができるセブンカフェがなどが話題にあがりますが、色々調べてみるとセブンイレブンの強さの秘訣には我々の業界でも大いに学ぶべき”哲学”や”仕組み”といった普遍的な強さがありました。

言わばセブンイレブンは1,800万のDAUと日々コミュニケーションをし、データを蓄積しながら成長し、勝ち続けている超優良サービスです。ここから学ばない手は無いでしょう。そこで本を読んだりネットで調べたり、そして時には元店長さんや業界の人にヒヤリングして学んだことをコツコツとアウトプットしていこうと思います。もちろん強さの秘密はコレです、と簡単に紹介できる一つの戦略・戦術があるわけではなく、いくつもの戦略・戦術や哲学、仕組みが掛け合わせって今のコンビニ業界一人勝ちが成り立っていると考えます。そこで、一つひとつひも解きながら、我々が取り入れられるエッセンスを考察していきます。

単品管理とリーンスタートアップ

IT業界に専攻があるとしたら、私はここしばらくは「実践リーンスタートアップ」でした。「リーンスタートアップ」はエリックリースがトヨタ生産方式などの「無駄を省く生産プロセス」などのコンセプトを自社サービスの構築に取り入れ、その科学的アプローチを体系化したもの、と言えば良いでしょうか。2012年に日本でも彼の著書が発売されるとかなり話題になりましたね。今でいう「グロースハック」的な感じで。
(※エリック・リース曰くリーン・スタートアップはトヨタから学んだマネージメント|Tech Crunch Japan

ただ、リーンスタートアップは一過性のムーブメントではなく、そのコンセプトやアプローチはことスタートアップ業界においては”大前提”であるべきだと思います。実践を含めたシンプルなまとめはこちらのスライドを参照頂けると嬉しかったりします。

さて、実はこのリーンスタートアップの根幹をなすコンセプトとセブンイレブンの強さがつながるわけですが、その前に下記の図をご覧ください。

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Built(構築する)→Mesure(計測する)→Learn(学ぶ)このフィードバックループ(以下BMLループ)をいかに高速に繰り返すか、これが無駄無く誰も望まないものを作るリスクを避ける最も重要なコンセプトなのです。詳細は省きますが、BMLループのコンセプトにおいて個人的に何より重要だと考えるのが「顧客の課題に対する仮説」というフィードバックループの出発点だと考えます。

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すべての中心には顧客がいて、その顧客がこんな課題をもっているのではないか?その課題に対するソリューションとしてこういうものが良いのではないか。そういった仮説に対して検証するための必要最低限で作れるソリューション(MVP:Minimum Viable Product)を構築して、定量的に検証して、そこからの学びをまた次の仮説に活かす。

この仮説と検証、そしてそれを可能にする定量検証システム、つまりPOSを使ってこの顧客を中心としたカイゼンのフィードバックループをどこよりも早く、そしていまだにどこよりも力強く実践し続けているのがセブンイレブンです。セブンイレブンは1983年に業界ではじめて全店に本格的なPOSシステムを導入すると定量的な検証によって日々の発注精度を高めていきました。つまりこのBMLループをはるか30年近く前から繰り返しているわけです。

ここで、セブンイレブンから学ぶべき大事なポイントがあります。セブンイレブンの鈴木会長はこう言います。

「データから得られた売れ筋を発注するというのは大きな誤解。データはあくまで仮説を検証するためのものにすぎない。」

つまりこうです。

 × 昨日鮭おにぎりが他のおにぎりよりも多く売れた。だから明日の鮭おにぎりの発注量を増やそう。
 ○ 明日は近くで運動会がある、だからおにぎり全般がいつもより多く売れるはずだ、おにぎり全体の発注量を増やそう。

この場合データはあくまでおにぎり全般がよりたくさん売れるという仮説を検証するためのもので、仮説と定量的な検証があってはじめて学びがあり、より高い次元で次のBMLループを回せるというわけですね。

なぜ、セブンはビッグデータ分析する他社より日販が高いのか|PRESIDENT ONLINE

何でもかんでもデータを取れば良いというものではない。仮説なきデータに意味は無く、仮説なき定量検証に学びは無いという強烈な教訓です。

また、鈴木会長はこうも表現します。

「昨日の顧客が求めたものを、明日の顧客に出してはならない。毎日来店されるお客様の心をいかにつかんで、昨日ではなく明日の顧客を満足させるか。」

Analyticsの数字を見ながら、KPIが順調に伸びていてもそれで満足していては中長期的な成長はできません。数字から読み取れるわずかな兆しや、むしろ数字に表れないようなことから「筋の良い仮説」を立てる力が、我々には求められています。

この仮説→発注→定量検証→学びというループをセブンイレブンでは「単品管理」と読んでおり、これを全店舗、全店員レベルで徹底しています。もちろん高校生のアルバイトでもこの単品管理を行ったりするわけで、それぞれの店舗をしっかりサポートするOFCという店舗マネージャー社員がこの単品管理というリーンスタートアップの根幹をなすコンセプトを全国16,000店舗全店に日々浸透させていっているわけですね。これがセブンイレブンのオペレーションの強みのひとつで、16,000全店舗がそれぞれの地域の異なる顧客に対して日々BMLサイクルを回して最適化し、それぞれの店舗が顧客最適化を繰り返しています。それも、かれこれ30年近くおこなっているのだからその蓄積たるや想像を絶します。

最後に繰り返しになりますが、「仮説」が無い検証やデータに意味は無い。優れたBMLのループの実践に必要なのはサイエンスですが、筋の良い仮説を立てるために必要なのはサイエンスよりもむしろアートでしょう。自社の競争環境、業界のトレンド、ユーザー心理、そしてもちろんそれぞれを裏付けるデータの数々。そこからいかに優れた「仮説」を導き出せるか。そしてその仮説を検証する仕組があるか。我々に必要なのは絶え間ない仮説→BMLループの探求ですね。

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