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2012-01-23

名著「人を動かす」から学ぶソーシャルサービスデザイン

Dale

大学生時代、ビジネス書や自己啓発本を読みあさっている時期がありました。「戦略プロフェッショナル」からはじまる三枝三部作やジャックウェルチの「ウィニング」など、今の仕事に生きている様々な名著との出会いがありましたが、その中でもダントツで未だに役に立っているのがD・カーネギーの「人を動かす」です。刊行されたのは1936年とのことなのである意味かなりの古典ではあるのですが、いわゆる「人と人の関わり」に関する普遍的で本質的なポイントをまとめているので、恐らく今後何年経っても色褪せることは無いでしょう。いかにして人を動かしたり、人を説得するか。仕事をする上で、人をマネージする上では避けて通れない最重要な課題に対して豊富な逸話を交えて紹介しています。

久しぶりに本書を読み返していたら、この「人を動かす」に出てくる様々な知見はマネジメントだけでなく”ものづくり”、もっと言うと”ソーシャルサービスデザイン”にも通じる話が多いなぁと思いました。もちろんいつの時代も我々作り手はそれを使う「人」を中心にサービスをデザインしなければならないのですが、特にソーシャルサービスにおいては単一の「人」ではなく、「人」と「人」の有機的なつながりをデザインすることが最も大事な要素であると思います。そこで、本書よりソーシャルサービスデザインに役立つ”重要感”というエッセンスをピックアップしたいと思います。

 

簡単に相手に重要感を持たせる「like」という仕組み

人を動かす秘訣はこの世にただ一つしかないとカーネギーは本書で断言しています。それは

「自ら動きたくなる気持ちを起こさせる事」

自ら動いてもらうためには、相手のほしがっているものを与えるのが唯一の方法。では人はなにを欲しがっているのでしょうか。偉大な心理学者フロイトによると、人間のあらゆる行動はふたつの動機から発します。

  1. 性の衝動
  2. 偉くなりたいという願望

また、本書ではこれをもっと広域に考え、人間が欲しがるものを大きく8つに分類しています。

  1. 健康と長寿
  2. 食物
  3. 睡眠
  4. 金銭及び金銭で買えるもの
  5. 来世の生命
  6. 性欲の満足
  7. 子孫の繁栄
  8. 自己の重要感

ここでポイントなのは、これらはたいてい満たすことができるものです。ただし、ひとつだけ例外があります。それは、食欲や睡眠欲同様になかなか根強く、しかもめったに満たされることがないもの、つまり8番目の「自己の重要感」です。

ここに今既にプラットフォームとなっているソーシャルサービスの肝があります。それはTwitterの「Retweet」であり、Facebookの「like」。それは、どんな些細な内容に対する「Retweet」や「like」でもOKなのですが、自らのアクションに対する、自分の関わりのある「人」から直接的に「Retweet」「like」というフィードバックを受けることは「自己の重要感」を満たすことに他なりませんね。このアクションに対するリアクションのループを上手くデザインすることが、ハマるソーシャルサービスにおいて重要であることがわかると思います。ちなみに、この自己の重要感に対する欲求は、人間を動物から区別している主たる人間の特性だそうです。面白いですね。

 

Instagramに見る階層式重要感

Instagramの初期の成功を見ても、初期にあのサービスをドライブさせたのは「like」の仕組みはもちろん、「popular」の機能によって一部のヘビーユーザーの”重要感”を満たし、刺激し続けたのも大きな要因だと思います。かくいう私もInstagramリリース初期はまだ簡単に”popular入り”できたので、必死に良い写真を投稿し続けたものでした。人は慣れてしまうものなので、同じレベルで重要感を満たされ続けると最初のような満足感は無くなってしまいます。なので重要感も段階的に満たされるようにデザインされていると良いでしょう。Instagramでいうと

写真を投稿する→「like」がもらえて嬉しい→また投稿する→しばらくすると「popular」に掲載され桁違いに「like」がつく→調子に乗ってヘビーに写真を投稿しまくる…

という抜け出せないアクション&リアクションループがありました。そう考えると、ソーシャルゲームは実に良くデザインされていますね。そこが課金に結びつくのですから、本当に恐ろしいものです。。

 

他にも本書にはソーシャルサービスデザインに活きる人を動かす原理原則が詰まっています。まだ読んだことが無い人も、過去に読んだことがある人も、一度ものづくりの視点で読んでみると面白いと思います。

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