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2012-03-05

NYCベースのスタートアップ「GetGlue」が再び注目を集めている本当の理由

Getglue-blackberry

エンターテイメントにチェックインするアプリ「GetGlue」は既にご存知の方も多いと思いますが、実際日本でヘビーに使っているユーザーはほんのひと握りでしょう。GetGlueはニューヨークベースのスタートアップで、同じくニューヨークを拠点とするFoursquareが特定のロケーションに「チェックイン」→「インセンティブ(バッジ)」ループを発明したのに対して、それを「テレビ」「映画」「スポーツ」などのエンターテイメントに転用して「チェックイン」→「インセンティブ(ステッカー)」ループをうまくパッケージさせました。

2010年のスタート当初はエンターテイメントチェックインという切り口が注目され、またfacebookにおけるリアルな人間関係をベースとした「ソーシャルグラフ」という概念に対して、興味関心をベースにして構成される「インタレストグラフ」がよりビジネスへのつながりの深さから注目されていた時期であり、そういった実サービス云々よりも一つ上のレイヤーで注目されていた気がします。そして昨年4月にはユーザー数が100万人を突破し、TechCrunch Japanでそれが報じられたこともあって日本でもその前後ではいくらか話題になっていましたね。このあたりはLooopsの斉藤さんが「ソーシャルグラフの進化と新興サービスが取るべき戦略(2011.5.9)」にて、ソーシャルグラフとインタレストブラフ、それぞれのポジショニング戦略など絶妙な切り口で解説しているのでこちらを熟読されることをお勧めします。

GetGlueはそれからは大きく話題に上ることは無かったものの(特に日本においては)、昨年末から今年に入り再び大きな注目を集めているように思えます。また、少なからずビジネス上の実績は、そこらの”注目だけは一人前”のスタートアップよりも遥かに成功していると思われます。現在のユーザーベースは200万強。FoursquareやInstagramの1500万ユーザーという数字と比べると、決して多いとは言えないこのサービスに今注目が集まっている理由を次の3つにまとめました。また、ひとつ決定的な結論を先に述べるとすると、それは

ソーシャルメディアをうまく活用したい各ブランドにとって、GetGlueはFacebook、Twitterという巨大ソーシャルプラットフォームでバズを起こす上でのアンプ(増幅器)の役割を果たしている

からだと思います。

 

1.Activated Users

GetGlueはROMではないアクションを起こすユーザーを着実に集めています。昨年11月時点での単月チェックイン数は約2000万。Foursquareが恐らく月間8000万チェックインでユーザーベースは1500万程度なので、1ユーザーあたりのアクション数は確実にGetGlueの方が高いです。また、テレビや映画などよりビジネスへと結びつきやすい属性やデータを保有しているため、後述しますがかなりの数のメディアパートナーを抱えるまでになっています。※ただし、誤解の無いように書いておきますが、今のフェーズのGetGlueにとってこの点は重要ですが、中長期な視点で考えた時に今のFoursquareとの比較は記事の最後に引用した記事にある通りで、あまり意味をなしません。

 

2.Social TV

昨年から今年にかけて、USでは”Social TV”やそれをエンパワーするモバイルデバイスにおいて”Second Screen”とう概念がかなり盛り上がっています。実際”Social TV”を標榜するアプリはかなりの数が未だにリリースされ続けており、かつテレビ業界においても今年に入ってからの3つの大きなイベント「Super Bowl(スーパーボウル)」「Grammy Awards(グラミー賞)」「The Academy Awards(アカデミー賞」においてそのソーシャルメディアとのより深い統合/融合の動きと、実際のソーシャルメディア上での実績数値が確実なものとなってきました。残念ながら日本のメディアにおいてこの視点で記事になることはかなり少ないのですが(特にUSの盛り上りに比べると)、わずかな日本語ソースを貼っておきます。

>> ビックイベントはメディア総動員で楽しむ時代に、全米最大のスポーツイベント、スーパーボウルに見るテレビ中継・ストリーミング・SNSの相乗効果 by Daiamond Online

>> アカデミー賞もソーシャルメディアに注目 舞台裏やパーティーの様子をネット配信へ by The Wall Street Journal 日本語版

そんな数ある”Second Screen App”の中で圧倒的No.1のサービスとなっているのが他でもないGetGlueです。海外のメディアを見ていると、もはや”The Social TV Startup”と紹介されることも多く、アカデミー賞では170,000チェックインという一つの番組におけるチェックイン数の記録を更新しています。ビックTVイベントの度にリリースされるインフォグラフも、お馴染みになっててきました。

Oscars

例えば先日のスーパーボウルにおいては、ビッグクライアントのPepsiとともに”定番ステッカーキャンペーン“を実施してビジネスとしての取り組みも数々成功させています。

 

3.via GetGlue

そういった”Social TV”におけるハブとしての役割を続ける中で、数多くのスポンサーシップを獲得しています。”ステッカーキャンペーン”のベースとなるスポンサーシップでのステッカーは現在680以上にのぼるそうです。これは以前のエントリー「InstagramとFoursquareはなぜ成功したのか?…」にも書いたニューヨークという地の利が活きている部分もあるでしょう。下記はGetGlueのHPに公開されている現在のメディアパートナーですが、ほぼ全部?って思ってしまうぐらいのコンプ感からその影響力の強さを感じます。

Partner_of_getglue

さて、ここでいう”影響力”とは何でしょうか?これが今GetGlueに注目すべき本質的な部分だと思います。各ブランドやメディア企業の立場に立ってみると、もはやソーシャルメディアを活用して消費者との関係をうまく”コミュニケーションデザイン”をしないと、今までのようにブランドの価値やメッセージを十分に消費者へ届けられないことを痛感していると思います。逆に一部の企業はソーシャルメディアを通じて得られた成功体験から、よりそういった感覚が高まっているというのも事実でしょう。そういったソーシャルメディアを通じて消費者との対話を実現する上で、現在不動のプラットフォームとなっているのが「Facebook」と「Twitter」であることは言うまでもないですね。いくらクロスメディアだと言って、CMでブロードリーチしつつ「続きはWebで」といってどれだけの人がそれぞれの点を線でつなぐことができているでしょうか。テレビをはじめとするマスメディアの力はブロードリーチという点は未だに健在ですが、情報がより人を介して伝播するソーシャルWebの時代においては「続きはWebで」みたいなやり方では導線は分断されています。その上で重要な媒介となるのがソーシャルメディアであり、よりシームレスに点と点をつなぐ作用を促進しているのがスマートフォン(モバイルデバイス)ということになります。

さて、昨年のad:Tech San fransiscoでの講演資料(Pepsi × X Factorのタイアップ事例)がSlideShareに上がっていますが、こちらで印象に残ったスライドがあります。

Getglue01

また、先ほどのアカデミー賞のインフォグラフでも、チェックイン数と同様にアピールしているKPIに6000万という数字がありますが、これは”TwitterとFacebookへのリーチ数”です。チェックインと同等に注力している指標がこちらということになります。つまりGetGlueとしては自社サービス内でのインタレストグラフ構築よりも、Twitter & Facebooという巨大ソーシャルメディアプラットフォーム上でのモジュールとして、いかにそのプラットフォームへの影響力を高めるか、ユーザーの入り口を取りにいくかという部分に注力していることが伺えます。そして、その”影響力”は各ブランドやメディア企業の立場から見た時にその本当の価値がわかることになります。彼らは自社単独でソーシャルメディア&Webの展開をするよりも、数字からも分かる通りGetGlueを通じて展開した方がより多くのバズをFacebookとTwitter上で起こすことができます(もちろん例外もありますが)。つまり、GetGlueはスポンサーにとってソーシャルメディア戦略上のアンプ(増幅器)となっていると考えられます。さらにここでもうひとつ大事なことがあります。それは、GetGlueを通すことによって、facebookページやTwitteの公式アカウントなど、ブランドからの広告めいた直接のメッセージではなく、友人やファロワーからのチェックイン、ステッカー通知という”身近な人たちからのフィード情報”として流れてくる点です。これにより、GetGlueを媒介にすることによって量だけではなく”質”も担保された形でソーシャルメディアへアプローチできるようになります。こうして現在、GetGlueはソーシャルメディアを通じて効率よく消費者とのコミュニケーションを図りたいブランドやメディアにとって最強のアンプとして注目が集まっているのだと思います。

 

現在はFacebookとTwitter上のモジュールとしてうまくワークしているGetGlueですが、今後は自身もインタレストグラフのプラットフォーマーとしてより広い層を獲得していくと思います。要はこの記事に書いてあるような世界観、といえば分かりやすいでしょう。やはり一歩先をいくのはFoursquareですね。ちなみにGetGlueのCEO、Alex IskoldはVentureBeatのインタビューで、2012年は”Personalizing the entertainment guide for the users“を目指すと語っており、よりユーザーの体験をベースとしたエンタメリコメンドサービスとしてより大きなプラットフォームと成る行く末を、見守っていきたいと思います。

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