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Webメディアの未来像〜モバイルファーストが世界を変える〜

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未来のWebを見据える上で、確実に疑いようの無い未来が2つある。それは、①世界規模でスマートフォン(モバイルデバイス)からのアクセスが中心となるということ。それにより、起きる/寝る、食べる、移動する、会話をする、感動する、など②人々の日々の営みに、よりWebが寄り添うようになるということです。これは、モバイル先進国日本では今までもさんざん語られた話ですが、あらためてこの”事実”をベースに自らを変革していかないと既存のWebサービスは生き残れないと思っています。Webは今後確実に、特定の時間にひとつの場所にとどまり、大きな画面でインタラクションするものから、不特定な細切れの時間にいつでもどこでも小さな画面で指先、いや五感でインタラクションするものへと大きくシフトします。これはかなり大きな人間とWebのありかたにおけるパラダイムシフトです。したがって、このパラダイムシフトの前と後で、Webのあり方は大きく変わらなければならないのは明らかですね。

これは見方を変えればもの凄いチャンスであり、今までのWebが培ってきた「情報を得る/コンテンツを楽しむ」「モノを買う」「コミュニケーションをする」…これらを提供してきたサービスはコンテンツ、ユーザーインターフェース、ビジネスモデル、すべてをモバイルファーストで再構築する必要があります。今までのWebの延長線上にあるモバイル最適化ではなく、モバイルベースでの利用シーン、インタラクションという全く異なるユーザーを中心にすべてを再定義する必要があるのです。

そんなチャンスがゴロゴロ転がっている真っ只中の今、私が特に興味があるのが「情報/コンテンツメディア」の未来像です。モバイルWebがメインストリームになるなかで、コンテンツ、ユーザーインターフェース、そしてメディアとしての評価指標とマネタイズモデルは大きな変革が必要であり、その未来の一端がおぼろげながら見え始めています。そして、既存の巨大Webメディアたちをひっくり返す大きなチャンスだとも思っています。本エントリーでは、この「Webメディアの未来像」に関して私なりに見据えているものを3つの軸で展開したいと思います。

 

1.画像(イメージ)が中心となる

スマートフォンがかなり幅広く普及し始めた今、恐らく国内ユーザーの最も滞在時間が長いサイト(アプリ)はFacebookとLINEでしょう。私はどちらも頻繁に使っているユーザーでもありますが、ひとつ気づいた共通点があります。それは、Facebookでは写真をUPした方が圧倒的にリアクションが多い。そして、LINEコミュニケーションの中心はスタンプということです。これはどういうことか。細切れの時間でアクセスするFacebookやLINE、それぞれのサービスの特性としてFacebookはリアルな今の自分を伝えたい、そしてLINEは感情をより楽しく手軽に伝えたい。それぞれ送り手と受け手にとって最も効率的で都合が良いもの、それはテキストではなく写真やイラストであるということです。つまり、細かい「テキスト」よりも広義の「イメージ」の方がモバイルWebにおいては都合が良いのです。イメージは一瞬でエモーショナルに伝える最強のフォーマットとも言えるでしょう。写真を中心にしたコミュニティサービスのInstagramはそんな文脈に沿ってブレイクしました。また、同様な思想を持った動画版のサービスがいくつかありますが、動画は全体像を把握するのに時間がかかり、また一覧性も悪い。短時間で人々の心を揺り動かす上では最強のフォーマットではありますが、画像に比べてしまうと決して相性が良いとは言えませんね。

振り返って、R25はフリーペーパーという新たなビジネスモデルが注目されましたが、もう一つ重要な視座を持っていました。それは活字が苦手な若者に向けて800字以内にすべての記事をおさめているという点です。そして、それはモバイルメディアではさらに加速すると考えています。限られたスペース、限られた接触時間により最適化すること、より人々の生活に寄り添うことがグラウンドデザインのベースとなります。もうひとつ、画像という側面からこのパラダイムシフトを象徴するものとすればPisterestのヒットですね。Pinterestの革新はUIの革新、ソーシャルフィードという大枠の概念からテキストを排除し、画像中心のシンプルでスタイリッシュな世界を作り上げ、それが今の時代に受けたんですね。こういった背景を受け、デバイスの中心がモバイルになるとどうなるか。文字は極力少なく、写真や画像・イラストなどのイメージでシンプルにかつエモーショナルに本質を伝える。これが未来のWebメディアにおけるコンテンツのあるべき姿だと思います。Flipboradなどは、やっぱり素晴らしいと思いますね。

 

2.メディアパワーの評価指標とビジネスモデルが変わる

モバイルシフトはトラフィックのあり方も大きく変えはじめています。検索エンジンの登場以来、Webの入り口において検索エンジンが圧倒的な支配力を持つようになり、ユーザーはメディアありきではなく、メディアの先にあるそれぞれのコンテンツをつまみ食い消費するようになりました。その傾向はソーシャルメディアの登場によってさらに加速され、現在は検索エンジンとソーシャルメディアの合わせ技によってその傾向は確固たるものとなっています。例えば本ブログでも記事によっては大量にソーシャルメディア上にシェアされたりしますが、その結果ブログに定期訪問してれるユーザーが爆発的に増えるわけではありません(この点に関しては私のブログ自体に問題があるとも言えますが…)。例外はあれど、人々はあくまで検索やソーシャルメディアを通じて細切れのコンテンツを消費しているにすぎないということです。したがって、大抵のWebメディアの収益の手段はコンテンツを大量生成し、釣れるタイトルを考え、SEOやSMOによって集めたトラフィックをインプレッション、クリック、コンバージョンをベースにしたWeb広告によってマネタイズするという画一的なビジネスモデルにとどまっていると言えるでしょう。

モバイルファーストの時代において、この文脈が大きく変わりはじめています。先ずはご存知の通り、iOS/Androidを中心としたアプリベースのパラダイムシフトです。良くWebかアプリかの議論がありますが、私の基本的な考え方はORではなくAND。そして、どちらかというとニッチで細分化されたアプリケーション群がこれからのWebの入口の主流になると思っています。これはHTML5とネイティブアプリの技術論ではなく、デバイスのインターフェース論です。iPhoneでWebのブックマークをホーム画面においているユーザーがどれだけいるでしょうか。では、アプリ主流になるとどういうことが起こるのでしょうか。よりひとつひとつのコンテンツが検索エンジンやソーシャルメディア上で消費されるのではなく、アプリケーション単位のメディアが入り口になります。Google経済圏、Facebook/Twitter経済圏から各コンテンツは脱却していくこととなり、その代わり、支配的地位を占めるようになったのがiOSで言えばAppStore経済圏、Androidで言えばGoogle Play経済圏ということになります。各メディアはプラットフォーム上のいちモジュールとして存在している以上、ここではプラットフォームの経済圏の中でうまく立ち回るという構図は残念ながら変わりません。(プラットフォームを目指す、という点はあえて省略しています)

では結局何がかわるのでしょうか?それは、コンテンツ単位の勝負ではなく、コンテンツをベースにしたアプリというパッケージの勝負になるということです。今までのメディアは細切れのコンテンツでWeb上でのトラフィック最大化を図ることで収益の最大化を図ってきました。しかし、これからは新たなプラットフォームと経済圏の中でパッケージとしての分かりやすさ&クオリティと、より深いレベルでのユーザーロイヤリティを獲得することで良質なユーザーを獲得し、課金、広告などより自由度を持ったマネタイズ方法が広がっていくと思います。例えばニッチなパッケージの良質メディアはユーザー課金、もしくはニッチなマーケットの広告ニーズによってPVにはよらない収益化が可能になるでしょう。よって、アプリの時代において重要なのがニッチ分野でNo.1になること、そしてもうひとつ大事だと思うのが次の項で論じるモバイルの特性を活かしたメディア作りです。

 

3.ラジオ的なメディア作り、ブランディングが重要になる

メディアはパッケージの勝負となり、よりエッジを立てた良質なメディアをそれぞれが目指すとなると、もはや「マス」という概念はあり得ません。少なくともプラットフォーム上のモジュールである限りは。その代わり、地域やインタレストでセグメントされた良質なコミュニティを持つことで未来のメディアはPVに偏重することなく、本質的にユーザーに向けて良いものづくり、メディア作りができると考えています。そこでヒントになるのがラジオです。古くから、ラジオは他のメディアに比べてユーザーの生活に寄り添う形で進化してきました。いつでもどこでも好きな時に、コンテンツはより個人の趣味が反映されたものになり、パーソナリティとのインタラクションによってロイヤリティも高い。かく言う私もラジオ少年で、好きな番組には熱心にハガキを投稿して、それが読まれた時の感動は今でも忘れません。とり貯めたカセットテープは未だに実家に残っています。

“未来のWebメディアはモバイルアクセスが中心となる。それはよりユーザーと生活に身近な存在となり、ユーザーは日々の生活のありとあらゆる点でその文脈に沿ったメディアを思い出し、手元の端末からアクセスする。それがマスかどうかは関係無く、その場その場でユーザーの課題を解決したり有意義な時間を提供できるか否かの世界。だからメディアはラジオとリスナーとの関係のように、積極的にユーザーとキャッチボールをしながらパッケージの精度を日々上げていくことが求められる。逆にそうすることによって、今までのWebメディアとユーザーとの繋がりは、Web登場以来考えられなかったほどの深さとロイヤリティを生み出し、新たなビジネスモデルを創出する。”

以上、基本的には「情報/コンテンツ」メディアの未来像に関してまとめてみましたが、それぞれのエッセンスは他の事業ドメインや、企業のあり方においても重要な視座を与えてくれるものだと思っています。このモバイルシフトの大きなチャンスは、あと半年から1年が本当の勝負所。2、3年後のWebメディアがどうなっているか、今から本当に楽しみです。

WHYからはじまる競争戦略とリーンスタートアップ

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「偉大なる企業、リーダーには共通するパターンがある」

「勝てる戦略には共通のパターンは無いが、共通の論理がある」

「スタートアップが失敗しないためには、効果的な科学的なアプローチがある」

 

一度の成功なら時代の流れとタイミング、そして運などによってたまたまラッキーパンチが打てるかもしれない。ただし、成長し続ける事業、企業を創るためにはラッキーパンチではなく、自社のおかれた環境やその時々の文脈を踏まえた上で「勝ち続ける」ための戦略や、普遍的に有効な成功へのパターンを見つけ出し、成功への「再現性」「持続可能性」を高め続けていかなければならない。この「再現性」「持続可能性」が個人的にも目下の課題なのですが、それを生むための共通の考え方、パターン、プロセスを学ぶ過程において、ある種必然的に各種方法論における「共通点」を見出したりしています。

前述した3つのイシューは、ここ1〜2年に読んだ本の中でベスト10に入るとある3冊の本がそれぞれ解き明かして行く内容なのですが、租借するうちにこの3つの中に共通点があることに気づきました。それはまさに成長し続ける事業、企業を創るための「再現性」「持続可能性」を高める上で強力な考え方であると思います。今回はこの「成功則に共通する方法論」を実際の企業の事例を交えながらここにまとめておきたいと思います。かなりマニアックな内容ですが、もの好きな方は最後までお付き合いください。

先ずはその3冊を簡単に紹介します。

「偉大なる企業、リーダーには共通するパターンがある」

TEDの動画が有名なので、そちらをご覧になった方も多いと思います。ここで出てくる「ゴールデンサークル」というのがその共通するパターンをいとも簡単に説明する最強のツールなのですが、今回のエントリーにおいてもこの「ゴールデンサークル」がすべての軸となります。

「勝てる戦略には共通のパターンは無いが、共通の論理がある」

 戦略系の本はそれこそポーターをはじめ色々ありますが、中でもこの本が個人的には一番しっくりきています。「戦略とは、特定の文脈に埋め込まれた特殊解」としつつ、すべてに共通する戦略のテンプレートは無いが、共通する”論理”はあるというのが本書のポイントです。中でも戦略を2つのパターン大別する考え方「SPとOC」に関する理解と応用が、すべてのストーリーにおいて生きてきます。

「スタートアップが失敗しないためには、効果的な科学的なアプローチがある」

 本書はスタートアップ界隈では説明不要だと思いますが、今回は特に「ピボット」に関する点において共通項をまとめたいと思います。
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1.すべてはWHY(ビジョン)から始まる

 もし「ゴールデンサークル」に関して知識が無ければ、先ずはこちらのTEDの動画を観ることをおすすめまします。
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 継続的にイノベーションを起こし続けているような偉大なリーダー、企業はすべて「WHY」という、なぜこの事業をしているのか?どんな理念や大義を持って仕事をしているのか?という根本的な部分から考え、そしてこの「WHY」からユーザーへコミュニケーションをはかります。だからAppleのように「WHY」が明確でその「WHY」に一度共感してしまえば滅多なことが無い限りユーザーは離れません。ここでいうAppleの「WHY」は、例えば「現状に挑戦し、他社とは違う考え方をする」という風に表現できるでしょう。こちらの有名なマーケティングキャンペーンを見れば、Appleがすべて「WHY」から始めているというのもうなずけますね。

[youtube http://www.youtube.com/watch?v=Nbsi2I0GXPk?wmode=transparent]

したがって、事業や企業としてのイノベーションを起こし続けるためには、またそれらの「再現性」「持続可能性」を高めるためには、先ず大前提のベースとしてこの「すべてをWHYからはじめる」ことへの意識を叩き込んでおかなければなりません。企業として投資家やステークホルダー、消費者へのメッセージとしても、各種サービスにおけるユーザーへのコミュニケーションメッセージとしても。「WHY」を先ず最初に明確にし、社内のコンセンサスを取り、すべてを「WHY」から始める必要があります。
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2.ゴールデンサークルにおける「戦略論」

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このシンプルなゴールデンサークルですが、これはあくまで「WHY」から始めるという考え方の概念図です。常に「WHY」からはじめよう、というコミュニケーション要素を踏まえつつ、ここにより「戦略性」を加味した要素を「ストーリーとしての競争戦略」にて推奨するSP(Strategic Positioning)とOC(Organization Capability)という概念を用いて強化することによって、「思考ツールとしてのゴールデンサークル」を「戦略テンプレートとしてのゴールデンサークル」へと昇華させることができないかと思います。

その前に、簡単にSPとOCに関して説明します。かなりシンプルな「戦略のパターン分け」の話なのですが、色々な戦略論の中でも特に目から鱗で、このシンプルなパターンを頭に入れておくだけで様々な業界での「勝ちパターン」を簡単に理解することができると思います。

先ず、戦略とは本質的に”競争環境”において「他社との違いをつくること」にほかなりません。戦略=違いをつくる、とすれば、そのアプローチとしては2つのパターンがあります。
  • ポジショニング:SP(Strategic Positioning)
  • 組織能力:OC(Organization Capability)
SPはその名の通りポジショニングの戦略です。つまり他社と違うところに自社を位置づけることです。いわゆるポーターの戦略論はすべてこちらの範疇です。何をやり、何をやらないかという意思決定をする。競争上必要なトレードオフを作り出すことがSPの目的です。Instagramが最近までiOSのみに特化してサービスを改善し続けてきたことや、Facebookが最初は大学のみのエクスクルーシブネットワークからはじめたことなどは、SPをベースにした戦略的意思決定と理解できます。

それに対して、OCは組織能力による差別化であり、他社には簡単に真似できない組織やルーチンの仕組みとしての強みのことです。表面的には真似することができても、実際の組織内での実行レベルでは中々真似できないものであり、かつ時間とともに常に進化していくものなので、SPのうような短期的な戦略的意思決定よりも、中長期での競争優位性となるのがOCです。Facebookで言えばザッカーバーグの強烈なリーダーシップをベースとした「ハッカーウェイ」を体現する組織がOCと言えるでしょう。また、トヨタでいえばカンバン方式やジャストインタイムといった”極力ムダを排除する”プロセスの改善である「リーン生産方式」がOCであり、実はここがリーン生産方式に立脚する「リーンスタートアップ」の話ともつながります。つまり「リーンスタートアップ」の科学的なアプローチは、様々な成功事例と数多くの失敗事例から持続的に成長可能なスタートアップを創るためのプロセス(OC)を科学的に解き明かし、それをどのスタートアップにも適用可能なプロセス論へと落とし込んだものになります。

説明が長くなりましたが、要は「勝ち続ける」企業や事業を創るためには、SP(戦略的ポジショニングの意思決定)とOC(他社が真似できない組織の強み)の両方を明確にし、その両方をエンパワーする施策を忠実に実行していくことが大事であると理解できるでしょう。そこで、戦略的テンプレートとして先ほどのゴールデンサークルにこのSPとOCを当てはめると以下のようになります。

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つまり「戦略=HOW」であり、その「HOW」の構成要素が「SPとOC」、そして何より重要なのがその順番です。必ずWHYからはじまり、次にOCを生かしつつSPで戦略的ポジショニングを行うということです。戦略において、あくまでベースはOCということになります。それを裏付ける事例として、マクドナルドを例にあげたいと思います。

 以下に示すのは、7年連続でマイナスだった売り上げを、就任後7年連続でプラスへ変えた原田さんの経営改革のベースとなる成長戦略を図示したものです。

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ここで原田さんが強調するのが、マクドナルドにとってすべての土台となるのが「QSC (Quality, Service, Cleanliness)&メイドフォー・ユー」であり、就任後先ず最初に着手したのが基本に立ち返ってのサービスクオリティの向上でした。特にメイドフォー・ユーのシステムは、今までの作り置きでの提供を一切廃止し、注文を受けてからできたてを提供するというもので、何よりスゴいのが今ではその平均提供時間が50秒と、過去の作り置きの提供時間よりも短い時間で提供できるようになったそうです。こういった仕組みの改善による組織、プロセスの強みはまさにOCの戦略と言えるでしょう。また、このベースが無ければその上にあるバリュー戦略や新商品の戦略も全く無意味になものになるということです。実際マクドナルドをゴールデンサークルに当てはめると以下のようになります。

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あくまで中心のWHYであるビジョンからすべてはスタートし、OC(QSC & メイドフォー・ユー)という他社には真似できない強みを土台としていかしながら、低価格で価格以上の価値を提供するバリュー戦略や徹底的に”マックらしさ”を追求した新商品戦略によって、結果として100円マックやビックアメリカなど一般消費者が知るアウトプットが出てくるという形です。このように”戦略ゴールデンサークル”を用いると正しい優先順位をシンプルに表現でき、戦略テンプレートとしてもコミュニケーションツールとしても汎用的に活用できるのではないでしょうか。

 

3.WHYを軸にピボットする

 

最後に、前述しました「リーンスタートアップ」における”戦略ゴールデンサークル”の適用を考えてみたいと思います。

仮説と検証を繰り返し、ユーザーにどう使ってもらいたいかではなく、ユーザーがどう使っているかをベースに方向転換(ピボット)するというのが「リーンスタートアップ」における方法論のハイライトならば、ここで”戦略ゴールデンサークル”は力を発揮するツールになると思います。実際、「リーンスタートアップ/エリック・リース」の中でも下記左図のようなピラミッドの概念が登場し、これはまさにゴールデンサークルに置き換えることができます。

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ここで、WHYという軸足は変えずに、仮説と検証のプロセスによって戦略(HOW)と製品(WHAT)を方向転換するというのがリーンスタートアップにおけるピボットの方法論です。アントレプレナー、スタートアップにおいてそもそもの行動の源泉であるWHYはそう簡単に変わる(変える)ものではありません。

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よって、もっと話を突っ込んで考えると、WHYを軸足にしつつも、特に戦略(HOW)の部分においてSPをどのように変えるか(戦略的にポジショニングを変えるか)、またはOCまでピボットすべきなのかを意思決定することが健全なピボットと言えるでしょう。また、本書ではあえて外部環境を踏まえた戦略的観点を含めずに自社のプロセスの改善のみにフォーカスしていますが、”戦略ゴールデンサークル”をピボットにおいても用いる事によってSPとOCを明確に区別した上での戦略性も検討することができるようになるでしょう。

 

= = = = =

 

WHYから始めるゴールデンサークルというコンセプト、SPとOCという戦略論におけるシンプルなパターン分け、そしてスタートアップを死の谷から救い上げるピボットという方法論においてそれぞれ共通点を見出しました。成長し続ける事業、再現性、持続可能性がある企業をいかに創るかというのは恐らく永遠のテーマであり、また時代や環境の変化によって大きく変わってくるものだと思います。その中でも、少しでも普遍的で強力なコンセプトやプロセスを発見するために、日々実践と検証を愚直に繰り返しながらの企業努力を重ねていくしかないですね。

NYCベースのスタートアップ「GetGlue」が再び注目を集めている本当の理由

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エンターテイメントにチェックインするアプリ「GetGlue」は既にご存知の方も多いと思いますが、実際日本でヘビーに使っているユーザーはほんのひと握りでしょう。GetGlueはニューヨークベースのスタートアップで、同じくニューヨークを拠点とするFoursquareが特定のロケーションに「チェックイン」→「インセンティブ(バッジ)」ループを発明したのに対して、それを「テレビ」「映画」「スポーツ」などのエンターテイメントに転用して「チェックイン」→「インセンティブ(ステッカー)」ループをうまくパッケージさせました。

2010年のスタート当初はエンターテイメントチェックインという切り口が注目され、またfacebookにおけるリアルな人間関係をベースとした「ソーシャルグラフ」という概念に対して、興味関心をベースにして構成される「インタレストグラフ」がよりビジネスへのつながりの深さから注目されていた時期であり、そういった実サービス云々よりも一つ上のレイヤーで注目されていた気がします。そして昨年4月にはユーザー数が100万人を突破し、TechCrunch Japanでそれが報じられたこともあって日本でもその前後ではいくらか話題になっていましたね。このあたりはLooopsの斉藤さんが「ソーシャルグラフの進化と新興サービスが取るべき戦略(2011.5.9)」にて、ソーシャルグラフとインタレストブラフ、それぞれのポジショニング戦略など絶妙な切り口で解説しているのでこちらを熟読されることをお勧めします。

GetGlueはそれからは大きく話題に上ることは無かったものの(特に日本においては)、昨年末から今年に入り再び大きな注目を集めているように思えます。また、少なからずビジネス上の実績は、そこらの”注目だけは一人前”のスタートアップよりも遥かに成功していると思われます。現在のユーザーベースは200万強。FoursquareやInstagramの1500万ユーザーという数字と比べると、決して多いとは言えないこのサービスに今注目が集まっている理由を次の3つにまとめました。また、ひとつ決定的な結論を先に述べるとすると、それは

ソーシャルメディアをうまく活用したい各ブランドにとって、GetGlueはFacebook、Twitterという巨大ソーシャルプラットフォームでバズを起こす上でのアンプ(増幅器)の役割を果たしている

からだと思います。

 

1.Activated Users

GetGlueはROMではないアクションを起こすユーザーを着実に集めています。昨年11月時点での単月チェックイン数は約2000万。Foursquareが恐らく月間8000万チェックインでユーザーベースは1500万程度なので、1ユーザーあたりのアクション数は確実にGetGlueの方が高いです。また、テレビや映画などよりビジネスへと結びつきやすい属性やデータを保有しているため、後述しますがかなりの数のメディアパートナーを抱えるまでになっています。※ただし、誤解の無いように書いておきますが、今のフェーズのGetGlueにとってこの点は重要ですが、中長期な視点で考えた時に今のFoursquareとの比較は記事の最後に引用した記事にある通りで、あまり意味をなしません。

 

2.Social TV

昨年から今年にかけて、USでは”Social TV”やそれをエンパワーするモバイルデバイスにおいて”Second Screen”とう概念がかなり盛り上がっています。実際”Social TV”を標榜するアプリはかなりの数が未だにリリースされ続けており、かつテレビ業界においても今年に入ってからの3つの大きなイベント「Super Bowl(スーパーボウル)」「Grammy Awards(グラミー賞)」「The Academy Awards(アカデミー賞」においてそのソーシャルメディアとのより深い統合/融合の動きと、実際のソーシャルメディア上での実績数値が確実なものとなってきました。残念ながら日本のメディアにおいてこの視点で記事になることはかなり少ないのですが(特にUSの盛り上りに比べると)、わずかな日本語ソースを貼っておきます。

>> ビックイベントはメディア総動員で楽しむ時代に、全米最大のスポーツイベント、スーパーボウルに見るテレビ中継・ストリーミング・SNSの相乗効果 by Daiamond Online

>> アカデミー賞もソーシャルメディアに注目 舞台裏やパーティーの様子をネット配信へ by The Wall Street Journal 日本語版

そんな数ある”Second Screen App”の中で圧倒的No.1のサービスとなっているのが他でもないGetGlueです。海外のメディアを見ていると、もはや”The Social TV Startup”と紹介されることも多く、アカデミー賞では170,000チェックインという一つの番組におけるチェックイン数の記録を更新しています。ビックTVイベントの度にリリースされるインフォグラフも、お馴染みになっててきました。

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例えば先日のスーパーボウルにおいては、ビッグクライアントのPepsiとともに”定番ステッカーキャンペーン“を実施してビジネスとしての取り組みも数々成功させています。

 

3.via GetGlue

そういった”Social TV”におけるハブとしての役割を続ける中で、数多くのスポンサーシップを獲得しています。”ステッカーキャンペーン”のベースとなるスポンサーシップでのステッカーは現在680以上にのぼるそうです。これは以前のエントリー「InstagramとFoursquareはなぜ成功したのか?…」にも書いたニューヨークという地の利が活きている部分もあるでしょう。下記はGetGlueのHPに公開されている現在のメディアパートナーですが、ほぼ全部?って思ってしまうぐらいのコンプ感からその影響力の強さを感じます。

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さて、ここでいう”影響力”とは何でしょうか?これが今GetGlueに注目すべき本質的な部分だと思います。各ブランドやメディア企業の立場に立ってみると、もはやソーシャルメディアを活用して消費者との関係をうまく”コミュニケーションデザイン”をしないと、今までのようにブランドの価値やメッセージを十分に消費者へ届けられないことを痛感していると思います。逆に一部の企業はソーシャルメディアを通じて得られた成功体験から、よりそういった感覚が高まっているというのも事実でしょう。そういったソーシャルメディアを通じて消費者との対話を実現する上で、現在不動のプラットフォームとなっているのが「Facebook」と「Twitter」であることは言うまでもないですね。いくらクロスメディアだと言って、CMでブロードリーチしつつ「続きはWebで」といってどれだけの人がそれぞれの点を線でつなぐことができているでしょうか。テレビをはじめとするマスメディアの力はブロードリーチという点は未だに健在ですが、情報がより人を介して伝播するソーシャルWebの時代においては「続きはWebで」みたいなやり方では導線は分断されています。その上で重要な媒介となるのがソーシャルメディアであり、よりシームレスに点と点をつなぐ作用を促進しているのがスマートフォン(モバイルデバイス)ということになります。

さて、昨年のad:Tech San fransiscoでの講演資料(Pepsi × X Factorのタイアップ事例)がSlideShareに上がっていますが、こちらで印象に残ったスライドがあります。

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また、先ほどのアカデミー賞のインフォグラフでも、チェックイン数と同様にアピールしているKPIに6000万という数字がありますが、これは”TwitterとFacebookへのリーチ数”です。チェックインと同等に注力している指標がこちらということになります。つまりGetGlueとしては自社サービス内でのインタレストグラフ構築よりも、Twitter & Facebooという巨大ソーシャルメディアプラットフォーム上でのモジュールとして、いかにそのプラットフォームへの影響力を高めるか、ユーザーの入り口を取りにいくかという部分に注力していることが伺えます。そして、その”影響力”は各ブランドやメディア企業の立場から見た時にその本当の価値がわかることになります。彼らは自社単独でソーシャルメディア&Webの展開をするよりも、数字からも分かる通りGetGlueを通じて展開した方がより多くのバズをFacebookとTwitter上で起こすことができます(もちろん例外もありますが)。つまり、GetGlueはスポンサーにとってソーシャルメディア戦略上のアンプ(増幅器)となっていると考えられます。さらにここでもうひとつ大事なことがあります。それは、GetGlueを通すことによって、facebookページやTwitteの公式アカウントなど、ブランドからの広告めいた直接のメッセージではなく、友人やファロワーからのチェックイン、ステッカー通知という”身近な人たちからのフィード情報”として流れてくる点です。これにより、GetGlueを媒介にすることによって量だけではなく”質”も担保された形でソーシャルメディアへアプローチできるようになります。こうして現在、GetGlueはソーシャルメディアを通じて効率よく消費者とのコミュニケーションを図りたいブランドやメディアにとって最強のアンプとして注目が集まっているのだと思います。

 

現在はFacebookとTwitter上のモジュールとしてうまくワークしているGetGlueですが、今後は自身もインタレストグラフのプラットフォーマーとしてより広い層を獲得していくと思います。要はこの記事に書いてあるような世界観、といえば分かりやすいでしょう。やはり一歩先をいくのはFoursquareですね。ちなみにGetGlueのCEO、Alex IskoldはVentureBeatのインタビューで、2012年は”Personalizing the entertainment guide for the users“を目指すと語っており、よりユーザーの体験をベースとしたエンタメリコメンドサービスとしてより大きなプラットフォームと成る行く末を、見守っていきたいと思います。