投稿者「Kenji Tomita」のアーカイブ

MAUやDAUより大事な”習慣化”というKPI

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本当にエンゲージしているWebサービスやアプリとは何だろう。ついつい気がついたら見ている、使っている。しかも毎日何回も使っている。つまりそのサービスが日常生活に完全に入り込んで、ユーザーにとって利用が習慣化しているサービス。これだけWebサービス/アプリが増え続けている現在、習慣化されないサービス=存続不可を意味すると言っても過言では無いと思います。

ではその”エンゲージ”というものをどのような指標で把握し、管理し、改善すれば良いだろうか。今回はそれを考えてみたいと思います。今回大きな視座を与えてくれたのはこちらのエントリー。
[参照]Quantifying Mobile Habits by Ryan Stuczynski

MAU,DAU

当然ですがMAUやDAUの数字を毎日眺めていても、それが何を意味しているのか、どのような改善につなげれば良いかは分かりません。ビジネスとしても、単にトラフィックが多いサービスはそのimpやclickを切り売りするだけの線形な成長しか望めません。また、習慣化という視点ではもっとアクティブユーザーを因数分解をして見なければならないでしょう。アクティブユーザーの因数分解というアプローチは、例えばPinterestチームのUser State Transitionが興味深いです。ただ、これも前後の変化によってその都度改善を打つこと、車に例えればハンドル操作やアクセル操作には役立ちますが、そもそもこの車が目的地まで辿り着けるポテンシャルがあるのかを計るためのものではありません。

エンゲージメント率(DAU/MAU)

サービスのエンゲージを計る指標として有名なのがこちら。

エンゲージメント率=DAU / MAU (%)

つまり月間のアクティブユーザーのうち、日々のアクティブユーザーの割合を示したもの。こちらは下記のように業界の数字が色々公開されているので比較するのに良いですね。

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[参照]It’s The Only App We’ve Ever Seen With Higher Engagement Than Facebook Itself

ただ、これにも課題があります。先ほどのUser State Transitionも同様ですが、日々のアクティブユーザーがたまたまアクセスしたユーザーなのか、習慣化されて意思を持って来たユーザーなのか、つまりアクティブユーザーの質を計ることができません。

習慣化スコア

アクティブユーザーの質を計る上で、Facebookのザッカーバーグは今年4月の四半期報告で次のようにコメントしています。

And now this quarter, I think we’re at almost 63% of people who use Facebook in a month, will use it in a given day. And I think, another stat that I think is actually quite interesting is we track how manypeople use Facebook not just every day, so I mean one day out of – so what percent of our monthly folks used it today, but what percent of people used it 6 days out of 7 days of the week.
And that number, for the first time in the last quarter, passed 50%. So, that’s pretty crazy, if you think about it, that you have this really big, engaged community and not only are almost 63% of people touching it in a given day and using the service, because it’s really engaging content, but we’ve gone through a period where more than 50% of people have used it 6 days out of 7 days of the week, almost very single day of a week. That just speaks to, I think, just the underlying kind of fundamental strength in the content and the work that we’re doing to serve the best content to the best people. (by facebook)

簡単に言うと次のような感じ。
「エンゲージメント率は63%で非常にイケてるんだけど、1週間のうちに6-7日使うユーザーが全体の50%を越えたんだぜ!これはマジでクレイジーだ。最高のコンテンツを最適なユーザーに提供できているということさ。」
ほぼ毎日使うユーザー、つまり圧倒的に習慣化したユーザーが13億のアクティブユーザーのうち50%いるというのは確かにクレイジーな実績ですね。このようにエンゲージメント率だけではなく、習慣化を定量的に把握し、アクティブユーザーの質をより詳細に把握・改善していくことがサービスの持続可能性を生んでいくのだと思います。

グローバルで見た時の主要SNSは、Ryan Stuczynskiの独自調査によると以下の通りです。

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ちなみに、直近日本で最も成長/成功しているアプリのLINEは、実際さらにクレイジーな数字をたたき出していますね。

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[参照]LINE 2014年4-9月媒体資料

では、所謂この”習慣化スコア”をどのように把握し、改善してくのが良いでしょうか。

定量(可視化)⇒定性(WHY)⇒定量(仮説の検証)のサイクル

“習慣化”スコアを用いた自社サービス(コアユーザー)のより深い理解と、習慣化ドリブンのサービス改善は以下のようなスキームが考えられます。

  • 先ずはアクティブユーザーにおける利用頻度の割合を定量的に可視化
  • できれば1週間に6-7日利用している理想的なコアユーザーに対して定性的なアンケートを実施し、具体的な習慣化されたシーンを洗い出す
  • 洗い出された習慣化された利用シーンに優先順位をつけ、数名のコアユーザーに対してインタビューを行う
  • 改善につなげるために重要なのは「なぜ、ユーザーはその利用シーンで習慣化しているのか」という「WHY」の部分を聞き出すこと
  • 通勤時間での利用に習慣化されているのであれば、なぜそのユーザーがその利用シーンで習慣化し、具体的にどんな利用シーンへのフィットがあるのかを明らかにする
  • この洞察より習慣化への仮説を立て、改善の施策へとつなげる

わかりやすく、無料のマンガアプリを例に考えてみましょう。

  • 1週間に6-7日利用している習慣化ユーザーにアンケートを実施、最も利用シーンとして多かったのが「夜寝る前にベットで」だった
  • 寝る前ベットで利用する習慣化ユーザー数名にインタビューしたところ、以下のような理由があげられた
    • 寝る前が一番ゆっくりマンガの世界に浸れる
    • 電車の中や人前で読みたくない
    • 毎晩良いタイミングで更新のプッシュ通知が来る
  • スマホでマンガを読むには「寝る前」に1人でリラックスした状態が最も適しているのではないか、という仮説を立てる
  • 寝る前の習慣化を促すように以下の施策を実施
    • プッシュ通知の配信時間を最適化
    • 寝る前に合うコンテンツの拡充
    • 寝る前利用を促進する広告コミュニケーション

最後は完全妄想でしたが、まさに現在は”習慣化 or die“な世界だと思います。単なるアクティブユーザー数や各種割合を見るのではなく、数字の裏にある、コアユーザーの息づかいまで感じ取れるような深い洞察を得ることによって、より多くのユーザーへ習慣化のマジックを気持ち良くかけてあげることが、勝ち抜くためのものづくりと言えるでしょう。

Pinterestのグロースチームが活用する4つの分析フォーマット

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Pinterestのオフィシャル開発ブログの「いかにPiterestが持続的なグロースを実現しているかHow Pinterest drives sustainable growth)」という素敵なエントリーでグロースチームが継続的に追っている4つのログフォーマットが紹介されていました。

  1. user state transitions
  2. Xd28s
  3. cohort heat maps
  4. conversion funnels

最後の2つは割とポピュラーだと思うのですが、前半2つの「user state transitions / Xd28s」ってなんぞやって感じだと思うので、4つまとめてご紹介したいと思います。

1.user state transitions

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曰く、これがPinterestのグロースチームの中で最も重要なチャートとのこと。まず前提条件ですが、Pinterestでは「28日」使わなかったユーザーを「休眠」してしまったユーザーと定義しています。つまり4週間分。彼らは1週間単位の分析がメインのようで、week by weekそして4週間分の「28日」という数字がキモみたいですね。さて、このチャートのポイントはいわゆるMAUの増減(グラフ上の水色)を以下の4つに因数分解し、なぜMAUが増えたのか、減ったのかを1週間単位で追えるようにしています。

  1. New signup(緑): 新規登録ユーザー
  2. New to Dormant(紫): 新規登録してから28日間使わずに休眠してしまったユーザー
  3. MAU to Dormant(青): アクティブユーザーだったが、使わなくなってから28日経ってしまったユーザー
  4. Dormant to MAU(赤): 28日以上の休眠期間を経て再度アクティブになったユーザー

チャート上の4つのデータを合計したものが水色のMAUの増減値ということになります。このチャートを使うことによってどこでユーザーを失っていて、どこでユーザーが増えていて、という健康状態をMAUの増減ではなく、より具体的に把握ことができます。その上で、グロースチームとしてどこにリソースをフォーカスして改善を行うかの意思決定ができるというわけですね。例えば紫のNew to Dormantのユーザーが増加しているのであれば、最初のユーザー体験の改善にチームはフォーカスすべきということになります。グロースチームの羅針盤といったところでしょうか。

2.Xd28s

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こちらのチャートはユーザーのスティッキネス(定着度)を特定のセグメント分けによって分類することによって、そのサービスのエンゲージメントをモニタリングします。「Xd28s」とは、過去28日間にX日アクティブだったユーザーを分類して分析するフォーマットです。

  1. 4d28s+/MAU(青): 過去28日間に4日以上アクティブだったユーザーの割合
  2. 14d28s+/MAU(赤): 過去28日間に14日以上アクティブだったユーザーの割合
  3. <4d28s+/MAU(緑): 過去28日間にアクティブだった日が4日未満のユーザーの割合

このチャートを活用するにあたっていくつかポイントはあると思いますが、すぐに改善につながる兆しを見つけるため、そして各数字を比較しやすくするためにあくまで「割合」を用います。このあたりは下記エントリーをご参考に。
 >>なぜ機能するKPIは割合や比率でないといけないのか?
また、この「4」「14」「28」という数字はPinterestのサービス特性を踏まえて色々試行錯誤して決めた数字だと思いますが、自社のサービスに適用する際はよりそのサービス特性にあった日数設定がキモとなりそうです。例えば利用頻度の高いモバイルアプリであれば、過去7日間で5日以上、3日以上、3日未満という日数設定にして、より改善サイクルを早められることが想定できます。改善につなげるためには、チャートとしてより動きのある日数設定が求められます。

3.cohort heat maps

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こちらはもはやメジャーな分析フォーマットですね。国内の解析ツールでもParty trackやFOXなどで実装されていますが、いわゆるコホート(主に新規ユーザー単位)でのリテンション率をヒートマップ形式でひと目でわかるようにしたものです。このグラフの例で言えば、4月1日あたりで赤いリテンション率の高い部分が少なくなっているので、この期間の新規ユーザーの最初のユーザー体験に何か異変があったことが読み取れますね。

4.conversion funnels

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こちらもメジャーなコンバージョンファンネルによる分析フォーマット。コンバージョンファンネルの良いところは特定のコンバージョンに至る各ステップにおいてどこで離脱しているか、つまりスタックの要因となっている改善ポイントを見つけやすいことですね。ちなみにPinterestでは会員登録のランディングページとシェア、招待のフローで用いているそうです。

あらためて大事だと思い知らされるのは、あくまで「改善のアクションにつながるためのモニタリング」ということ。分析のための分析ではなく、グロースにつながる分析フォーマット。こういった事例を導入する上でも、その目線が何より大事だと思います。

【実例100選】GrowthHackのハンドブック

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グロースハックネタを100個まとめた素敵なebookがあったので思わずポチっ。ブロガーが活用するような小ネタからyoutubeやfacebookのグロース事例など大小様々ですが、1ページに1ハックづつ、なぜ使うべきなのか(Why should I do this?)、誰が他に使っているのか(Who else is doing this?)と共通フォーマットでまとめてあるのでまさにハンドブック。ほんのいくつかをピックアップしますが、これを自分のサービスに当てはめるとどうなるかなぁ、という軽い感じで一気に流し読みするのがオススメ。kindleで買えます。

[amazonjs asin=”B00JZ29JHO” locale=”JP” title=”Growth Hacking Handbook: 100 practical startup growth tactics”]

The My Name is Company Hack

ありとあらゆるWeb上のコメントの名前を、例えば「John Smith」ではなく「John Smith @Company」にして社名を覚えてもらおうというかなりアーリースタートアップ向けなsmall hackですが、こういう地道な活動は大事ですね。本書の他の事例でも出てきますがQuoraで発言したり、自らBlogなどでコンテンツを発信したり、その業界で存在感を出すことは結果的にプロダクトのグロースに還元できるオフラインな効力も多いはず。

The Powerpoint Hack

こちらもかなりsmall hackなのですが面白かったので。例えば書いたブログ記事を`PowerpointやkeynoteでスライドにしてslideshareにUPすればさらに検索に対して網を貼ることができ、embedで他のブログでも引用されやすくなりますよというもの。アナリティクスツールのKISSmetricsはこのハックを多用しているとのこと。確かにシンプルなスライドは引用しやすいですよね。

The YouTube SERP Hack

名前から察する通り、上記Powerpointと同様に自社サービスに何らか関連する動画をyoutubeにアップしてコンバージョンにつなげようと言うもの。特にGoogle Searchには効果ありそうですね。例えばフリマアプリだったら、「最も良く商品をアピールする写真の撮り方とアピールできるフリマアプリ」みたいな感じですかね。まぁこれじゃステマギリギリか。

The Little Bighorn Hack

もし狙っているコアターゲットにアプローチが難しいならば、まずはアプローチしやすい似たようなターゲットからサービスを育てよう的なハック。Facebookは(結果的に?)最も身近なチャネルの大学生をターゲットとしたネットワークでサービスをPMFさせ、その後さらに広範囲にグロースさせていきましたね。良くある新規事業案でありがちな落とし穴が圧倒的なチャネルの弱さ。どうやってそのターゲットに効率的にアプローチするかはサービスが解決したい課題と同じくらい大事だと思います。

The Share The Good News Hack

ユーザーがそのサービスの価値を実感したタイミングで、そのサービスをemailやsocial mediaで紹介してもらうようアプローチするというハック。この”タイミング”が大事ですね。アプリでもストアへのレビューを促すアラートビューや、同様にアプリ自体のシェアを促すアラートビューを良く見かけますが、どちらも最もユーザーが「このサービスは素晴らしい!」と思ったタイミングでそのアラートを出すかというデザインが大事ですね。

The Winback Hack

非アクティブになってしまったユーザーにインセンティブ付きのemailを送ろう、というECで良くあるあれです。インセンティブのデザインはどうあれ、非アクティブになってしまったユーザーをRe-Activationさせるのはグロースにおいて非常に大事なアプローチだと思います。登録系のサービスならmailで、アプリならPushで、最後のアクセスから特定の日にちが経ったら○○、というのが効きそうです。

The Aha Moment Hack

ユーザーがそのプロダクトを理解し、最初にはじめて大きな価値を感じたタイミングを理解してハックしようというもの。こちらのエントリーで書いた内容ですね。

The Thank You Hack

ザッポスやディズニー、リッツカールトン的なやつです。正直これは小手先かつ定型文でどうにかハックできるものでは無いのですが、短期的なグロースよりも中長期的なグロース/ブランディングにおいて意識的に、戦略的にプロダクトに仕込んでいきたいものですね。evernoteのアンバサダーマーケティングなどはその延長線上を仕組化した事例かもしれません。

The Turbo Hack

とにかくSpeedを上げろというハック。例えばAmazonは表示速度が0.1秒遅いと100万ドルの損失があるそうで、これぐらいの規模になるとそのインパクトは絶大ですね。もちろんAmazonほどの規模がなくとも、「0.1秒でも表示を早く」、そして「サービスがダウンしない」というのはグロースを支えるベース(土台)としてものすごく大事だと思います。

ちなみに本書の著者Jon Yongfookさんは以前日本に10年住んでいてクックパッドさんなど日本の企業にジョインしています。なのでmixiやアメブロなど日本の事例もいくつか出てきたり。さらにこの本はクラウドファンディングによってebookになったそうで、自ら行動を起こすには本当に素晴らしい環境ですね。