InstagramとFoursquareはなぜ成功したのか?2012年最も大事な5つのキーワード
もうすぐ2011年にも幕。
今年大きくブレイクし、新たなプラットフォームとしての地位を確立したサービスと言えば、写真共有のInstagramとローカルチェックインのFoursquareではないでしょうか。Instagramは昨年リリース、Foursquareは2009年の6月に正式公開してますが、ともに今年の9月と6月に1000万ユーザーを突破するという大きなティッピングポイントを迎え、APIの公開も相まってどちらもプラットフォームとして大きく飛躍しました。また、2011年を振り返って、ベストスマートフォンアプリを選ぶとしても個人的にはこの2つです。
InstagramとFoursquareはなぜここまで成功できたのか。それぞれの成功の要因を5つのキーワードでまとめたいと思います。2011年のバズワード的なキーワードもありますが、本質的には2012年と言わず普遍的に大事な成功則だと思います。
Pivot
InstagramはもともとBurbnという総合的なソーシャルチェックインのアプリだったことはもはや有名ですね。彼らはそのサービスをリリース後、「どう使ってもらいたいか」ではなく、「どのように使われているか」そして「実際どのような問題を我々のサービスは解決しているのか」に注目し、その結果「写真の共有」が最も利用されていたので、その1点に集中してサービスを方向転換(Pivot)させました。もちろんそれだけでなく、iPhone4登場による解像度向上による写真利用のニーズ拡大など大局の流れとのセットでPivotを決めています。なのでこういったユーザーベースのアプローチとマーケットベースのアプローチのバランス感覚がPivotを決める上で重要なんだと思います。今までPivotに失敗しているサービスや企業は、このどちらかが欠けていたり、バランスが悪かったりしたのが要因ではないでしょうか。
Focus
Instagramの事例では、上記Pivotにおいても軸となったのは集中(Focus)です。「Burbnのコアな機能をひとつだけ残せるとしたら、何を残すか」という軸のもと、総合的なサービスから「写真の共有」にFocusしました。またInstagramがこれだけ短期間にサービスを拡大できたのも、iOSというプラットフォームに絞ってサービスを改善してきた結果です。普通の考えだとAndroidなど他のプラットフォームにもサービスを拡げる形でユーザーベースの拡大をはかりがちですが、これは実事業者にしか理解しづらいことかもしれませんが、プラットフォームを増やして開発リソースを分担、もしくは組織を拡大して対応することは、結果として全体としての開発スピードやサービスクオリティを落とす事につながることが多いです。コミュニケーションの複雑化、多岐にわたるマネジメントの発生、マーケティングの分散と複雑化など、「拡大」におけるデメリットの落とし穴は数多く存在します。Instagramはこの事を認識した上で「拡大」への気持ちをぐっとこらえて少数精鋭でのiOSフォーカスを保ったのだと思います。
またFoursquareも競合のGowallaに比べて徹底的に「Check-in & reward」、つまりチェックインというアクションと、それに対してメイヤーという称号やバッヂなどのインセンティブを与えて動機づけるというアクションループの精度を高めることにひたすらFocusしてサービスを拡げてきました。どちらもしたたかだと思います。
Gamification
このキーワードも今年かなり耳にしたものですが、最も体現しているサービスはFoursquareですね。実際未だにヘビーユーザーとしてFoursquareでガンガンチェックインしてますが、Foursquareの場合はユーザーベースが拡大すればするほどハマっていく仕組みになっています。誰もが自分の好きな場所、好きなお店はあったりしますよね。そこでメイヤー(市長)になることは周りのユーザーが増えるほどメイヤーの優越感は増していきます。また、Foursquareでは相手との戦いだけではなく、自分のチェックインの可視化によって過去の自分とも対峙するので、ほんの少しでも向上心のある人なら過去の自分を越えようと思ってチェックインにいそしむでしょう。この「Gamification」という呼び方は最近もてはやされていますが、今後のサービス作りにおいてものすごく普遍的に大事な要素だと思います。特にスマートフォンアプリは日々増え続けて行く中で、我々が直面しているのは競合過多環境におけるユーザーの可処分時間の奪い合いです。その中で、今後より
①ソーシャルメディアを活用して定常的にバイラルを生み続ける仕組み
②ユーザーをアクティブ化させ続ける仕組み
という2つが大事だと思います。この2つを促進する上において、Gamificationという概念は外せない要素になるのではないかと思います。
Location
O2O(Online to Offline)という言葉も今年は良く耳にしましたが、ここで言いたいのは引き続きロケーションベースのサービスが流行る、そのオンラインの動きがリアルなビジネスと結びつくということではなく、そういったサービスがモバイル、スマートフォンによって拡大していくことは前提として、さらに”地の利”を意識することが大事ということです。Foursquareの最大のライバルは同次期に同じコンセプトでリリースされたGowallaでした。今月FacebookはGowallaの買収を発表し、この長い戦いにも終止符が打たれFoursquareの勝利がより明確になったワケですが、この戦いの勝因の大きなひとつがheadquraters、つまり本拠地です。ロケーションベースのサービスの鉄則は、先ず特定の地域やコミュニティにおいてマジョリティを取る事。逆にそうやってクリティカルマスを越えないとサービスの本質は発揮できません。Foursquareの本拠地はアメリカの中心地であるNewYork、GowallaはAustinでした。New Yorkは様々な会社や店が密集し、チェックインする場所に関しては事欠きません。また、その地に集まる人たちもまた、先進的なサービスに敏感で社交的な人たちです。どちらの拠点が有利かは自明ですね。
また、ここで「Location」を挙げたのはそれだけではありません。
Marketing/Design
これは非常に広い意味合いを持つ万能な言葉なのですが、特に重要だと思うのがサービスをユーザーに届ける活動全般、そしてサービスをブランディングし、収益化するための活動全般。そしてそれら全体を”デザイン”することです。Foursquareが地の利でGowallaに勝利したのは、単純にチェックイン対象のスポットが密集していたり、そういった先進的なサービスに敏感で社交的な人たちが集まっているからだけではありません。初期のFoursquareをドライブさせたのがBravo, Zagat, Showtime, MetromixなどのNew Yorkに本社を置くサービスとパートナーシップを組んだことだと言われています。こちらの「ニューヨークのスタートアップシーンが熱い理由」でも指摘しているような、いわゆる”New York Shift”の本質の部分が今後より大事になるのではないかと思います。つまり、テクノロジーをベースとした優れたものさえ作れば、ソーシャルメディア上で拡散し人々に広く受け入れられるようなある種”ラッキーパンチ”が打てるような時代は終わり、2012年以降は良いサービスをいかに各種のメディアやソーシャルサービス、他の企業との協業などを通じて拡げ、ブランディングし、かつその全体の文脈にあった絶妙なビジネスモデルを構築するなどの、総合的なサービスの“デザイン力”が競争力になっていくと思います。ありとあらゆる手を尽くして”勝つべくして勝つ”戦いをしなければ勝てない。だからこそより”Marketing””Design”という概念が大事になると思います。だからこそそこにアクセスしやすい”location”が大事だと思います。最近は日本でも地方でのスタートアップシーンが盛り上がっていたり、盛り上げようという動きがありそれはそれで良いと思うのですが、特に“Marketing”という”Technology”に比べると人と人のつながりにも依存度の高い要素を考えると「東京」で事業を行うほうが断然有利だと思います。
来年はどんな年になるのでしょうか。本当に楽しみです。「ニューヨークのスタートアップシーンが熱い理由」にあった下記の言葉を、噛み締めるような年になるのではないかと思います。
デザイン、賢明な新しいビジネスモデル、そして、配信の経験がテクノロジーと同じぐらい重要視される段階に達しているため、東海岸のテックシーンは盛り上がっている。新しい東海岸で成長する企業は、西海岸が過去10年で作り上げたテクノロジープラットフォーム、アマゾン等の使い方が簡単なインフラ、グーグル等の発見ツール、そして、フェイスブックのソーシャルグラフに依存している。エッツィ、グルーポン、そして、ギルトグループ等の企業はテクノロジー系企業と考えられているかもしれないが、実はテクノロジーを基に作られた賢く、新しい革新的な企業である。才能豊かなデザイナー、マーケッター、そして、実業家がニューヨークに集まっているため、この傾向は今後も続くのではないだろうか。
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